物流のIT化は着実に進んでいるものの、まだまだな部分もある

運送業と言えば原始的な作業で荷物を集配し、配っているのだろうと思っている人も多いのではないでしょうか。確かにそれは間違いではありませんが、運送業でも着々とIT化は進んでいます。あまり知られていないかもしれませんが、運送業はかつてはアナログしかない世界でした。だからこそ、ITの波が来た時に影響を受けやすい、あるいはITを導入する余地が多々あったとも言えるでしょう。例えば荷物の集配に関してはWEB上で追跡が可能になっています。荷物には一つ一つ「コード」を割り振り、その荷物が一体どこにあるのか。
 
 
それまではいつ到着するのかが分かっていただけで、今現在どこでどのような状況となっているのかはなかなか把握出来ないものでした。ですがIT化のおかげで、インターネットで少し調べればどこで何をしているのかが分かる時代になったのですからありがたいものです。また、受取に関しても変わりつつあります。それは、クレジットカードを利用出来るようになっている点です。かつて代引きと言えば現金決済のみでした。そのため、現金が無い場合、受取人がそこにいるのに荷物を渡せない状況だったのです。配送ドライバーとしては、口にこそ出さないものの「なんで用意しておいてくれないの」という気持ちにさせられていたであろう事は容易に想像出来るのではないでしょうか。ですがクレジットカード、さらにはデビットカードまで利用出来ますので、「お金がないから受け取れない」は無くなりました。ちなみに配達で言えば再配達の受付もWEB上から可能な所も登場しています。電話ですと、ドライバーが出れないケースもありますが、WEBから設定を行えばドライバーに通知が行くシステムとなっていますので、再配達はどの時間に行うべきなのかが、ドライバーにすぐに分かります。こちらもまた、かつてであれば一度営業所や集配所に戻らなければならないか、あるいは電話が来たとすればドライバーに電話口で伝えなければなりませんでした。そのため、入れ違いになってしまったり、ドライバーとて接客している時もあるのですから、そのような時には伝える事が出来ず、そのまま営業所まで戻ってきてしまって、再び再配達に行く。このような手間もかかっていたのですが、それもなくなりました。
 
 
集配そのものはもちろんですが、仕分け作業時に於いてもITの波は訪れています。荷物一つ一つを機械が自動で識別。伝票番号まで読み取りますので、何時何分にどの営業所で仕分け作業が行われたのかまで分かる運送業者もあるのです。
 
 
運送業者の場合、最終的な仕分けはどうしても人が行わなければならないのですが、最終的な仕分けの直前までは機械の手によって出来るとも言えますので、誤配を最小限に食い止められるのです。運送業者がコストカットをと思った時、人件費も大切なのですがそれ以上に誤配の費用をどうにかしなければならないのです。誤配の際の対処方法はいろいろとあるのですが、時間指定など、時間が定められている場合、急遽別便を出すケースさえあるのです。赤字云々ではなく、指定時間までにお客の所まで届けなければならないのです。
 
 
出来なければ運送会社としての信頼感を損ねる事になってしまいますので、赤字が出るだとか、悠長な事は言ってられないのですが、誤配防止のためにもまた、ITが役立っているのです。また、これは比較的早い段階で行われていたのですが、ドライバーは運転中であっても時には電話を取らなければならないケースがあるのですが、運転中の通話はルール違反です。ですが、それは携帯電話やスマートフォンを手に持っての通話です。それに対応すべく、、初期からBluetoothのハンズフリーを導入。手元の操作だけで電話をオン・オフに出来るため、運転しながらの通話も可能になっているのです。こちらもまた、Bluetoothという技術があればこそでしょう。
 
 
運送業者の中には、なんとびっくり、スマートフォン向けに公式アプリまで用意してくれている所があります。公式アプリからどのような事をチェック出来るのかといえば、自分の荷物の状況です。何時に着くのか、出した荷物はどのような状態になっているのか。これらを知れます。しかもスマートフォンのアプリですので、手元の操作で簡単に行えるのです。本来であればパソコンから番号を入力しなければ出来なかった事が、スマートフォンのアプリで簡単に出来るようになっているのですから驚きです。もちろんそれは無料で行えます。集荷や再配達まで出来ますので、頻繁に運送業者を利用する方であれば、こちらのアプリはインストールしておいて損をする事はないはずです。さらにはGPSとの連動も比較的早くから行われています。GPSを搭載する事により、まずドライバーがどこにいるのかを把握出来ますから、再配達や集荷の際、特定のドライバーではなく、都合の良いドライバーを呼び出せるのです。また、渋滞情報等も本部でチェックしたり、災害情報を流したり。これらが出来るのはGPSだからこそと言えるでしょう。
 
 
一方で、まだまだ運送業者はITを導入すべき余地があるのも事実です。まだまだアナログな作業が多い業種ですが、例えば荷物の仕分けの際、最後の最後は人力になるのですが、こちらで何かしらのデジタル技術の導入は出来ない物か模索している業者もいるようです。先にも話に出たように、運送業者にとって誤配は金額面のリスクはもちろんですが、信頼という点でもどうしても大きなダメージを追ってしまいかねません。ましてや近年はインターネットでの通販業者のおかげで、スピーディーさも求められています。通販業者は「当日配送」を謳っているのに、運送業者の仕分けミスのおかげでそれが出来ない。運送業者は顧客だけではなく、通販業者にまで謝らなければならない状況となってしまうのですから、ご配送の防止のために、IT技術をどのような形で導入すべきか模索している所も多いようです。最終的にはどうしても人間の手によって分けるたけに、どうしてもミスが出てしまうのですが、ミスが出て「仕方がない」では済まされないのです。デジタル技術を駆使する事によって、ミスを防げるようになれば初期費用などあっという間にペイ出来るでしょう。運送業者にとって誤配の問題は解決しなければならない問題であると同時に、長年頭を悩まされ、どのように解決すれば良いのか分からない状況でもあるのです。ですが、仮にIT技術を上手く駆使してそれらを防ぐ事が出来るようになれば、作業の迅速化はもちろんですが、コストカットにも繋がります。特に運送業界全体で少子高齢化の影響をモロに受けており、土の運送業者も人手不足が顕著と言われています。ですが、IT技術のおかげでそれらを乗り越えられるかもしれません。例えばですが、自動運転がより高度なものになれば、ドライバーも必要なくなります。お客への配送の場合にはさすがに無人という訳にはいきませんが、営業所から営業所など、エンドユーザー相手ではなく、自社の連結であれば自動運転でも何ら問題ないでしょう。つまり、まだまだこれからもIT技術との融合が図られていくという事です。
 
むしろ少子高齢化の問題を解決出来るのは、ITしかないと言っても良いでしょう。これからどのような形でITと融合していくのかはまだまだ未知数ですが、今後のIT技術と運送業者の融合は、ある意味日本社会・産業構造そのものを占っていると言っても決して過言ではありません。